2013年第Ⅳ期号  ▲▽ 確率のはなし ▽▲

先日行われた前期終了試験の現代文でのことです。俳句の季節を答える問題が15問出題されたのですが、なんと15問全部はずした生徒がいたとのことです。会議の時に聞いたのですが、皆びっくり。確率を計算してみると、春夏秋冬の中から一つを選ぶので間違う確率は3/4 = 0.75ですから、全問間違う確率は0.75の15乗です。電卓をたたいて答えを出すと、なんと0.013…、1.3%です。ガリガリ君ですらアタリを引く確率は3%ですから、奇跡的な数字です。事情を聞いてみたら、時間がなくなったので俳句を読まないで解答欄に適当に答えを書いたとのことでしたが、それにしてもすごい確率です。「ある意味すごくありません?」と言っていましたが、できれば違うところでこの奇跡的手腕を発揮して欲しいものです。

確率を計算してみると思わぬ数字になったり、感覚とはかけ離れた結果になることがしばしばあります。理論的にはそうなんだろうけど、直観とは違うよなあ、というような問題を用意しました。とりあえず気楽に読んでみてください。『 』内の内容は直観に従ったもので、おおむね間違いですので、同意するようですと私の罠にはまったということです。

 

問題1.

箱の中に5個の玉が入っていて、5人の人が順番に1個ずつ引いていきます(引いた玉は元にもどしません)。当たりが1個だけ入っていて、それを引くと1万円もらえます。何番目に引くと1番当たりやすいと思いますか。

 

1万円もらえるんですから,真剣に考えましょう。いろいろな考えが出てくるのではないでしょうか。『先に引かれたらおしまいなので、何と言っても1番に引くのが良い。』とか、『1番目はまず当たらないな、5分の1だから。2番目か3番目あたりが手頃だな、真ん中とって3番目にしよう。』また、ある人は『いやいや、まだ早いね。4番目に引くとしても2個のうちの1個だから、絶対あたる5番目にしよう。残り物には福がある、と言うし。』

5番目に引くと絶対当たるというのは、すごく強引な考えですね。それまでの4人が全員はずれなければならないことを考えていただきたいのですが。

正解はおわかりかと思いますが、何番目に引いても確率は同じです。なぜ同じになるかというと、例えば3番目に当たる確率を考えると、1番目がはずれて2番目がはずれて3番目が当たるのですから、その確率は、
4/5×3/4×1/3 = 1/5で5分の1となりますので、同様にして何番目に引いても確率は5分の1になりますので、何番目に引いても当たる確率は同じです

 

では少し問題を変えてみましょう。これだと何番目に引いても確率が同じだということは直観的にも明らかでしょう。

 

問題1. の続き その1

箱の中に5枚の封筒が入っていて、その中の1つに1万円札が入っています。5人が順に1枚ずつ封筒を取り出し、全員で一斉にあけます。3番目に引いた人の当たる確率はどれだけでしょう。

 

これだと先に引いても後から引いても有利不利はなさそうです。ですから何番目に引いても当たる確率は5分の1ですね。

それではこのように問題を変えたらどうでしょう。上級者向けの問題です。

 

問題1. の続き その2

箱の中に5枚の封筒が入っていて、その中の1つに1万円札が入っています。5人が順に1枚ずつ封筒を取り出しました。さあ全員で一斉にあけましょうと思ったら、すでに1番目の人があけてしまって、「なんだ、はずれかよ。ガックリ。」と言ってしまったのです。さあ、3番目に引いた人の当たる確率はどれだけでしょう。

 

『はじめっから5分の1でしょう。一斉に開けようが、だれかが先に開けようが、当たる確率は5分の1でしょ。でしょ。』

気持ちはよくわかりますが、そうではないのです。1番目の人がはずれとわかった時点で確率は変わってしまうの

です。条件付き確率(高2の数学で学習します)と言って、わかった条件をすべて加味して確率を求めます。だから、1番目の人がはずれとわかった時点で残り4枚のうちの1枚が当たりですから、3番目の人が当たる確率は4分の1です。

『でもやっぱり5分の1だな、引いた時点で確率は決まっているのだから。』と考える人もいると思います。分からず屋です。それでは、もし先に開けてしまった1番目の人が当たりだったらどうでしょう。「やったー! 一万円ゲットだぜ。」と言っている人を横目に、それでも3番目の人は当たる確率は5分の1だと思い、ドキドキしながら封筒を空けるでしょうか。それは究極のわがままかマジックです。この場合の3番目の人が当たる確率は明らかに0で5分の1ではありません。

 

では次の問題です。今から20年ほど前にアメリカで大論争になったもので、直感と論理的な思考がずれるレベルの高い問題です。

モンティホールという人が司会するアメリカのゲーム番組でのことです。あなたならどう考えますか。

 

問題2.

プレイヤーの前に3つのドアがあって、1つのドアの後ろには景品の新車が、2つのドアの後ろにはヤギ(はずれを意味する)がいる。プレイヤーは新車のドアを当てると新車がもらえる。プレイヤーが1つのドアを選択した後、モンティが残りのドアのうちヤギがいるドアを開けてヤギを見せる。ここでプレイヤーは最初に選んだドアを、残っている開けられていないドアに変更してもよいと言われる。プレイヤーはドアを変更すべきだろうか?

 

やぎの匂いがするとか、メェ~と鳴き声が聞こえるとかはありません。また司会のモンティさんはどのドアが当たりかを知っています。プレーヤーになったつもりで考えましょう。選んだドアをそのまま開けてくれれば確率3分の1で何も悩むことはないのですがね、ドアを選ぶ時点で十分に悩んだことでしょうし。

こう考えるのは当然でしょう。『選んだ時点では3分の1の確率だったけど、他の1つがはずれとわかった時点で選んだドアが当たる確率は2分の1になりました。これを条件付き確率と言います。さっき、習ったばっかり。』偉い! 条件付き確率を覚えていた。『従って変えても変えなくても確率はいっしょ。しかも変えてはずれたら後悔するので自分だったら変えません。初志貫徹!』

後半部分は精神的なものなのでどうでも良いのですが、今回の『 』の主張はかなりまともです。これが学者を含めた1万人以上の人の主張でしたが、残念ながら正解ではありませんでした。

正解は「プレーヤーはドアを変更すべき」です。そうすると当たる確率が2倍になります。『いやー違う、絶対に変えても変えなくても確率はいっしょだー!』と思う人はいるでしょうね。そういう人は質問に来てください。10秒で納得させてあげます。