2014年夏期号 ▽▲ 自分探しの若者たち ▲▽

▽▲ 自分探しの若者たち ▲▽

胡子俊英

去年辺りでしたか、以前に卒業した生徒のお母さんから突然電話がかかってきました。

「先生、うちの子、お笑い芸人になるって言い出したんです」という言葉に私も驚きを隠せませんでした。何しろ、中学生の時から無口な超まじめ少年で、およそお笑いとは縁のなさそうな人物だったからです。一橋大学の商学部に進学し財務官僚が似合うような彼と、お笑い芸人とはどうしても結びつかなかったのです。

「悩んでいるようなので、もしそちらに伺うことがあったら、相談に乗ってやって下さい」ということで電話は終わりましたが、彼が塾を訪ねてくることはありませんでした。

それが、風の便りで、彼が本当にお笑い芸人になったという話を聞きました。早速ユーチューブで検索してみると本当になっているのです。少し痛い場面もありましたが、新人にしてはいい味を出しています。よろしかったら、下のアドレスで見てやって下さい。コンビ名「さすらいラビー」の中田君です。

高校の同期生同士で結婚したカップルがいました。ご主人の方は大手電気メーカー勤務、奥さんは高校の英語教師をしていました。ご主人の仕事から海外勤務も長く、子供も三人いて、二人目をベルギーで産むなど、バイリンガルに育っているものと羨ましく思っていました。

ところが、長男は高校時代に荒れた生活の末、バンドにのめり込んでいったという話を聞いていました。夫婦の愚痴を何度か聞いてあげてはいましたが、為す術もなく日々は流れていました。

何年か前に曲を出して、これもユーチューブで見られるということで探してみると、いかにも何かを求めてもがいている若者の叫びのような曲が流れてきました。これで食べていくのは大変でしょうが自分で選んだ道です。陰ながら応援していました。

それが、今年、ケーブルテレビのチャンネルを変えていてたまたま音楽番組のところで見覚えのあるグループ名が目に留まりました。まだやっていたんだ、と思いながらも、一応ミュージックTVという番組で放映されているということはそれなりに売れてきたのかとネットで検索してみると、何とメジャー・デビューしているというのです。ドコモのCMにも使われるなど、その道では評価されていたのです。こちらもよろしかったらご覧下さい。

以前は、裕輔君の「裕」の字が間違ったりしていたホームページもすっかりおしゃれに変わっていました。グループ名「the Flickers」の安島君です。

http://theflickers.net/profile/

子供はなかなか親の思い通りにはなりません。特に今のように社会全体が流動化していると、レールの上を走ることが幸せとは限らないかも知れません。大切なことは、成長過程で、自分の頭で考えて道を切り開いていく力を養うことではないかと思います。親があまりにも安全なレールを敷き過ぎると、思考力のない子供を作り上げる危険さえあります。

レールを踏み外してばかりいる子も、せっかく乗せたレールの上で停滞してばかりいる子も、みんな悩んでこそ成長していくのではないでしょうか。

おまけ  中学生の頃、作文の名人だった中田君の作品が残っていました。

もうすぐ学校で委員長陣選挙があります。委員長陣は生徒会みたいなものです。僕は選挙管理委員会の一人です。これは自分からなったわけではなく、学校から任命されました。最初はめんどくさいな、と思っていたのですが、仕事でみんなの前とかで話しているうちに、仕事そのものよりも、話すことがちょっと楽しいと思いました。けれどやっぱりめんどくさいのは変わらないので、正直早く選挙が終わって仕事をやめたいなと思いました。

秋休みが始まりました。成績表も返されたけれど、思ったよりも悪くなかったので、なかなか気分よく前期を終えることができました。秋休みといっても一週間ぐらいなのですが、特に宿題もないので、普段はできないことをできたらいいと思います。例えば、あまり仲良くない友達の家に行ったり、行ったこともない駅に行って計画なしに歩いてみたり、冒険してみたいな、という気になりました。是非今までにない充実した休みを過ごしたいです。

昨日、学芸発表会(学発)がありました。学発は文化祭みたいのものですが、食べ物は出せないし、運動部の演目もなかったりして、発表する人以外からはあまり楽しくないものとされています。しかし、毎年最後に体育館でダンス部の公演があります。これだけは別で、毎年全学年、他学校、親からOBまでいろんな人が集まって熱烈な視線が送られます。ぼくもその一人で、すごく感動しました。恥ずかしい話ですが、本当に感動して泣きそうになったし、その公演だけで学発一日がとても意義のあるものになりました。ぼくも何かしらの場所で活躍して、輝けたらいいなと思います。

「話すことが楽しい」、「冒険してみたい」、「輝けたらいいな」、舞台に対する憧れがやはりあったのでしょうか。中2の秋頃の文章です。