2010年第Ⅱ期号 ▲▽ ミュージアムを楽しむために ― “常設”のすすめ ▽▲

2010年 第Ⅱ期号

 

 

▲▽ ミュージアムを楽しむために ― “常設”のすすめ ▽▲

佐治恵

 

東京はアート(芸術作品)の宝庫。美術館や博物館(まとめてミュージアムと呼びましょう)があちこちにあって、意外に身近なところに生涯見続けたいと思えるほどの作品があったりします。学校でレポートの課題に出されることもあるでしょうし、自分から進んでどこかいいミュージアムがあれば行ってみたいと思うこともあるでしょう。

とはいえ、昨今のアート・ブームはいささか過熱気味。有名画家の企画展を世界各国で巡回すると、いつも日本での入場者数が一番多いのだそうです。展覧会によっては50万人とか80万人の動員などというのですから、尋常のことではありません。すばらしい作品を見る喜びと人波にもまれる疲労をはかりにかければ、つい二の足を踏むというもの。でもビッグネームの企画展にこだわらず、まずは東京で経験できるアートとの出会いを楽しみたいという人は、常設展(コレクション展とか館蔵品展とも言います)を訪ねてみたらどうでしょう。ミュージアムには、コレクションをもたず企画展や公募展だけを行っているところもありますが、コレクションを多く持ち、展示スペースにも恵まれた国立・公立を中心とするミュージアムの場合、企画展の期間でも並行して常設を見せてくれます。どんなに混み合った企画展のときも、常設スペースに足を踏み入れた途端、まるで別世界のような部屋でゆっくり過ごすことができるのです。

そんな“穴場”をいくつか。まずは上野の東京国立博物館。入り口正面の本館1・2階は、飛鳥時代から明治時代までの山ほどの絵画・彫刻・書・工芸品を頻繁に展示替えして見せてくれます。アニメ版「時をかける少女」に出てくる秘密のかぎを握るミュージアムはこの本館です。平成館1階の考古展示室では、教科書に出てくる土偶や埴輪などに出会えます。同じ上野の国立西洋美術館。ロダンの彫刻、モネの特別展示の部屋はもちろんのこと、日本では他でほとんど見ることのできない西洋中世からルネサンス期にかけてのコレクションがみもの。竹橋の国立近代美術館。1階は企画展示ですが、4階・3階・2階と順に降りながら明治以降の絵画作品を中心とするコレクションをみていると、日本の近現代そのものをたどるような思いがします。2階奥の部屋では、現在活躍中のアーティストが、自分が共感する他の人の作品とともに自作を展示するコーナーがあって、ここは刺激的。現代アート専門の美術館としては清澄白河の東京都現代美術館。夏には子ども向けにジブリやディズニー系の企画展示で大にぎわいになりますが、そんな時期でも常設展示はたいていガラガラです。実験的で危険な匂いのする作品に触れて、思わず笑ってみたり、頭をひねったりするのもいい経験になるでしょう。